lunatic studio live

猫飼いの気儘な絵描き。元ピアノ弾きで腱鞘炎持ち
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先日のコウノドリ #10 おまけ3

先日のコウノドリ #10 おまけ3

●「命についての選択」 は 「苦しくて当たり前」 (by高山透子)

透子「見て欲しいの」
夫 「…もう決めたじゃないか」
透子「……あたし…まだ、迷ってる」
夫 「これ以上考えたって、苦しいだけだよ」
透子「…苦しくて、当たり前じゃない」
透子「父さんや母さんがこういったから、じゃなくて…、あたしたち夫婦で話し合って決めたいの
   どんな結論になってもいいから、二人で一緒に考えようよ」


カウンセリングでのサクラの言葉を正面から受け止めた透子。
帰宅した夫にダウン症について書かれた数冊の本を差し出す。
「これ以上考えても苦しいだけ」
と目をそらす夫に
「苦しいのは当たり前だ」と返す透子

「夫婦で話し合おう」「一緒に考えよう」
赤ちゃんの、お母さんとお父さんである自分達二人で一緒に、ってことだよね
一足先に、親としての自覚をしつつある透子さんが、夫にもそれを促してる

それは、一度は『家族』を持つと決めた者の持つべき責任
この苦しさを受けとめることは、親となる意味を自覚すること

 
●命を救う、って…? (by今橋孝之)

今橋「昔だったら救えなかった命が、医学の進歩で救えるようになった。それは喜んでいい事かなぁ
   と思う」
白川「はい」
今橋「だけど、命が救えるようになったからこそ苦悩する家族だっている…
   ……命を救う、って――どういうことなのかな…?」
白川「……」
今橋「…難しいね」


珍しくも、弱音らしきものを吐いた今橋先生
直接的には、NICUに子を預けたままろくに面会にも来ない両親を憂いての発言だけど
明代さんの中絶の事が今橋先生にも堪えてるんだろうなと思う。

医学の進歩は、たくさんの命を救ったけど、それでもすべての命は救えない。
そして、例え命は救えても、心までは救えない場合だってある。



●『負うた子に教えられた』今橋センセ…?

白川「NICUの卒業生やご家族の笑顔を見てると、俺も頑張んなきゃなって思います
   NICUを卒業することがゴールじゃない、その後に続く、赤ちゃんとご家族の人生に寄り添いた
   い……それが俺達の仕事の目標だ、って――」
白川「
…(今橋の顔を見て微笑って)…今橋先生が教えてくれました」
今橋「……ありがとう、白川先生」

 
完全に毒が抜けて、#8の頃とは別人のように真白くなった白川先生。「上を見ろ!上を!」とのたまっていた彼が嘘のよう(笑) それはとにかく。
彼のこの言葉で、今橋先生には救われた部分が必ずある筈。

サクラと下屋の師弟関係ってイイなぁと常々思うんだけど
この二人、今橋と白川の師弟関係も、また違った感じでイイなぁ、と改めて思った


●高処を目指す喜びと誇り

白川が面接を受けに来たのは、あの!講談医科大!…白川センセ、勇気あるな…
面接官の先生に志望動機を問われて、こう答える白川。

白川「自分の中の足りないものに気付いたからです」
白川「新生児科に尊敬する先生がいます。その先生の様な新生児科医になりたいと思ってきました
   その先生と同じになることが恩返しじゃない。また違う知識・技術を身に着けて、一つでも多くの
   命を救えるようになりたいんです。そのためなら、研修医からやり直すのでも構いません」
面接官「……『尊敬する先生』って、今橋先生の事でしょう?」
白川「
…(びっくり)…え?…はい…」
面接官「…
(苦笑気味に)…随分大きな目標だ」
白川「
…(ちょっと微笑って)…はい」

今橋センセの名って、他の病院にまで知られてるんだ…すごいね。然も在らんって気もするけど。
最後の白川の笑顔、すごく嬉しげだったなぁ
自分が尊敬する、目標とする人が、誰の眼から見ても素晴らしい人なんだって…赤の他人からもそう認められてるって…確かに嬉しいよね

外の人に指摘されて初めて気付く、師の偉大さ。
目標は遥かに遠く、遥かに高い。
だから誇らしい。だから、やりがいもある。だから、嬉しい。
そして、だからこそ、高処を目指す意味も意義もある。

白川センセ、頑張れ!


●小さな棺 

#5でも出てきた退院時のお見送りのシーン
#5の時も苦しかったけど、今回はそれとはまた異なる苦しさでした
#5の時は、哀しいけど暗くはなかった
けど、今回は、重くて哀しくて苦しくて、ひたすら真っ暗だ

明代さんが抱いていた小さな棺の、その小ささが、泣けるんだよ
その中にいるのは、本来ならまだ生きていた筈の命
その小さな命の未来を絶ち切ったのはサクラ自身の手

そのことを充分すぎるほど自覚しているサクラの心の痛みは、果たしていかばかりか、と


●僕は、あんなこと したくない

サクラ「…産科医として、避けられない事だからね…
   ご家族が幸せになるための選択だと……そう自分に言い聞かせてる…
   …でもさ…………僕は赤ちゃんが好きだから――!」
四宮「……ああ」

 
感情押し殺した、低く掠れた、聞き取り辛い小声の独白部分から転じて
「でもさ、僕は赤ちゃんが好きだから…」ってとこがさ…
少しだけトーンの高くなったサクラの声が、単なる 『声』 じゃなく、まるで 『悲鳴』 のように聞こえてね…
今にも泣きそうな表情でさ…目潤んでて、涙こぼすまいとして顔揚げて、視線を上に逃がしてるとことか…
もう辛い…サクラが本気で苦しげで痛々しくて

ここまでで充分以上にサクラに感情移入しちまってたもんで、余計に見てて辛かった
「産科医として」じゃない、「医師としての前提」を外した、人間・サクラの叫び、なんだよな
僕は、あんなこと したくない…! 
って。

直前のお見送りシーンで既に涙目、このシーン見てる時点でもう私ゃ、ボロ泣きに近かったです 
「僕は赤ちゃんが好きだから…!」でとどめ。もう、アカンかった…
ここ、予告で何度も見てその都度ジワジワ泣きそうになってたくせして、本編で見てもやっぱりここで泣いちまうんだね…ホント、俳優って魔術師だ…


●透子さんはもう、「お母さん」

シーン冒頭、夫に付き添われて病院に入る時の透子さんの様子がね、表情真っ暗で、目には絶望感めいた色すら漂ってて。足取りは重そうだし、なんだか…死刑台へ向かう罪人のようでさ。
それに、透子さんって、自分がそんな状態でも(というか、そういう状況だからこそ、か)、お腹にしっかり手を当てて、その中にいる赤ちゃんを護ろうとしてるんだよ…恐らくは無意識に。
見てるこちらまでグサグサ心に刺さった。痛々しくて。

カウンセリングルームでサクラと向き合う高山さん夫婦。
二人で充分考えた結果、やっぱり中絶する、とサクラに告げる。
正直、「ああ、やっぱりこちらもなのか…」と私まで暗い気分になったです。
見てるだけの私でさえこうなのだから、直接彼らと対峙している、そして辻さんに引き続いて連続で直接的な中絶の処置をせねばならなくなったサクラの気分は、もう――本音いえば、泣きたいのを通り越して、ホント、真っ暗なんだろうな、と…

最後に、透子さんは、胎児のエコー画像を見せてほしいとサクラに頼む。
やっぱり静かに微笑んで了解するサクラと、ギョッとした風に驚く夫。
そんな夫を見遣って、透子は静かに告げる。

透子「見たいの」
透子「今回は…諦めよう、次が…って、いうけど――、それは…(自分のお腹を見て、手で触れて)…
   この子には関係無いよ」
透子「…きちんと見よう? 私達の赤ちゃんだよ?」


苦しいモノはもう見たくない。今までだって充分苦しんだじゃないか、もう沢山だ…っていう夫の想いは、解る。解ってしまう。弱さだろうが逃げだろうがエゴ塗れだろうが、苦しいことは避けたいってのが当たり前の人情。
でもさ…
OA初見時、「今回は諦める」っていう夫の言葉の「今回は」のところで私、瞬間的に引っかかってしまってね。
「そんなの、お腹の中の赤ちゃんには関係ない。もし『次』があったとしても、その子は、今回死なせる赤ちゃんとは違う個体だ。今回の子を流してしまったら、その子とは二度と会えないんだぞ?同じ『赤ちゃん』でも、『次』と『今回』じゃ何もかもが違うのに!」
…と、まぁ、他人事ながら憤りのようなものを覚えたんだけど
そしたら、直後に、ちゃんと透子さんが同じことを夫に言ってくれました。透子さん、ありがとう。(私が礼を言う理由もないけど)

透子さんって、この時点でもう、「お母さん」なんだよね

最初にサクラの元へやって来た時から、数度にわたるサクラとのカウンセリングの度
透子さんの凝っていた心が解れて、それと比例するように、お母さんとしての自覚が出来ていくのが見ていて判る
前シリーズの#5で、今橋先生が言ってた
「お腹の中の命が、妊婦を『母』として育てていく」
って、こういうことなんだよね。
そしてその「母の自覚」を促したのが、医師として真摯に対峙していたサクラの言葉なんだろう。



●わからないことについて、「わからない」と正直に答えるのは勇気
 迷ってる時、「迷ってる」と正直に告げることも勇気

中絶を選んだ高山さんが、最後に赤ちゃんを抱きたいと希望している、というサクラの言葉を聞いて、驚き、そして多分、戸惑いや怒りのようなものを覚えたのであろう吾郎先生。
即ち
自分で中絶すると決めておいて、最後にその赤ちゃんを抱きたいだなんて、矛盾してる、身勝手だ、我が儘じゃないか!
…そんな吾郎の想いは、↑で書いた サクラの「ならば、何故?」 と多分同じ。

吾郎の疑問(あるいは憤り)は、多分、視聴者の多くが抱くものだろう。合同カンファレンスに集まった医師たちの中で、多分、一番視聴者に近い位置にいるのは、研修医(正式な医師になるため勉強中)である吾郎。「医師であって医師でない」彼しか抱けなかった、というか、彼しか表に出せなかった疑問かもしれないね。
他の医師たちは、本音ではそう感じていても、表には出さなかった(出せなかった)だろう。それこそ、「プロの」医師であるが故に。
きっとこれは、「医師」だからこそ抑え込んで隠すのが当然の疑問なんだろう。四宮だって、疑問を口にした吾郎に呆れていた。
でも、サクラは(サクラの弟子である下屋も)、疑問を抱く吾郎を咎めない。
「疑問があるならちゃんと聞いた方が良い」「いいよ、続けて」
と二人は吾郎に先を促す。

吾郎「僕は、考えてしまうんです。出生前診断も…どうして 『命の選別』 をするんだろう、って」
   このまま出生前診断がメジャーになっていって、それ
(検査を受ける事)が当たり前になった
   時、医師としてどう向き合えばいいんでしょうか」
サクラ「…吾郎先生……その質問の答えは、僕にはわからない」


息をのむ吾郎に、サクラは静かに自らの想いを語りはじめる 

↓ 

●命についてのすべてのこと

『命は尊い』
『赤ちゃんが生まれてくることは奇跡だ』
『平等である筈の命を選別してはいけない』
…その通りだ
けど――僕はずっと、迷ってる
 
『命の選別』
その言葉にみんなが囚われてしまっていて
お母さん、お父さん、家族…その事情には目が向けられていない

それぞれの事情の上に命は生まれてくる
育てていくのは家族なんだ

出生前診断を受けた結果、中絶を選択する家族もある
……心が重くなる…いつまでも慣れることはない…

けど…
悩みに悩んだ上でその選択をして、僕達に助けを求めてる
その手を払いのける事は出来ない…!
 
中絶を決めたお母さんが、赤ちゃんを最後に抱きたいと願う
確かに矛盾してるかもしれない。だけど…!
その葛藤に、僕達が寄り添わないで、誰が寄り添う…!?

検査を受けた人・受けなかった人、赤ちゃんを産んだ人・産まなかった人
どの選択も間違ってない
………いや――
『間違ってなかった』と思えるように
産科医として、家族と一緒に命と向き合っていく…

――それが、僕に……僕達に出来る事なんだと

そう信じて、僕は此処にいる


「間違ってない」 から 「間違ってなかったと思えるように〜」 までの間が、サクラのホントの心なんだろう
サクラにも迷いや逡巡もある、苦悩も葛藤もある、勿論優しさもあるけど、それと同等の哀しみもある。それ以上の怒りも。
でも
例えば、患者の望みがサクラ自身の望みとは異なっていたとしても
それでも、と。
自分で自分に言い聞かせるように
自分自身を自分で納得させるように
自分の心の内の乱れを自分自身の言葉で整理するように
揺れて荒れて爆発しそうな自分自身の中の嵐を自分自身で治めるように
 
ああ、サクラがここにいる…って思いながら、観てました
綾野剛さんの中にサクラが生きている…って思って、泣きながら見てました
表情や息遣いは勿論、語る単語の一つ一つ、それだけじゃない、それこそ、行間の『間』にまで
最初から最後まで、全てに神経通ってた。想いがこもってた。魂こもってた。
綾野剛さんに感謝。熱演に感謝。その努力と思い入れに感謝。
 
本当に、綾野さんって、『鴻鳥サクラ』 を生きてる んだなぁ…


●命の話

静かに熱く医師としての想いを語ったサクラ。聞き入っていた周囲は、サクラが語り終えても打たれたような静寂のまま。
我に返ったサクラが、今橋の方を見、どこか居た堪れないような、落ち着きのない様子で詫びる。

サクラ「…もう、カンファレンスの時間ですよね? すいません、関係ない話をして…」
四宮「関係なくない」
四宮「…必要な話だろう?」
今橋
「(頷いて)…命の話 です」

この時サクラが何処かはにかんで見えたのは、大勢の前で「自分語り」をしてしまった己の「熱さ」や「幼さ」を恥じたのかもしれないし
今橋がサクラの顔を見なかった(見られなかった)のは、座のトップ(会議の司会)としてその場にいる全員に等分に告げる為、というのもあるだろうけど、何より、自分より若いサクラの「熱さ」や「純粋さ」が眩しかったからかもしれない
だからこそ、サクラの眼を真っ直ぐ見てこう言い切った四宮が、いいなぁと思う。サクラのこういった「熱さ」や「若さ(幼さ)」や「純粋さ」を全部ひっくるめて真っ直ぐに受け留め、称えてた。
何があっても家族と一緒に命に寄り添うと告げるサクラに、多分この座で今一番寄り添ってあげていたのは、四宮だ。 

その後、サクラの言葉を黙って噛みしめる小松・下屋・四宮・白川・今橋、それぞれの様子と表情が挟まれたのも良かった。
言葉って、それを発する人の想いの欠片だから。だから、聞いた者の心を揺らす(こともある)。良い言葉でも悪い言葉でも。そして、良い意味でも、悪い意味でも。
特に今回のサクラの言葉は魂の欠片だ。そういう言葉って、聞く人の胸に響く。心に刺さる。聴き手の魂まで強く揺さぶるんだよ






その4へ続く
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